6/13 クラウゼヴィッツ戦争論

攻撃は最大の防御、という。だがプロイセンの軍人クラウゼヴィッツの著者「戦争論」で、防御は攻撃より強力な戦争形式だと説く。攻撃側は侵攻を続けるために、大量の資源をつぎ込まざるを得ない。国民の支持も得て守りを固める防御側の方が有利との見立てだ。

もちろん、ただ守っているだけではいかんともしがたい。敵の攻撃をいなしつつ、鋭く反攻に打って出る。それこそが「防御の真諦なのである」(篠田英雄訳)。逆に攻撃側にとって要注意なのが、攻めがピークアウトする局面だそうだ。それまでの戦闘で消耗している上に、防御側から反撃を受けることになるためだという。

世界中で読み継がれ、日本では森鴎外も邦訳に携わった名著が世に出て約200年。欧州の戦乱を見つめ続けてきたクラウゼヴィッツなら、今後の展開をどう見通すだろうか。ロシアに侵略されてきたウクライナが、本格的な反転攻勢に出始めた。東部と南部で進軍を試み、ロ軍側との激しい戦闘が起きていると伝わる。

戦況は偶然に左右されやすく「戦争は一種のばくちだ」とも同書は論じる。予測は難しいのだろう。それでも、人々の命を賭すばくちに走った独裁者の勝ちだけは絶対にのめない。「思慮に富み、大勢を概括的に通観でき、冷静な人物」。戦争論が掲げる望ましいトップの像だ。そんな知性を欠く侵略者は、退(ひ)くほかない。