1/31 感染者数のうなぎ上り

「うなぎのぼり」の語源を辞書で引くと、諸説あるようだ。いわく「川をまっすぐにのぼる様子」。つかもうとすると上へ上へと逃げるため、ともあった。葛飾北斎の「鰻登り」は後者であろうか。天に向かってもがく巨大なウナギとそれにしがみつく人間の姿を滑稽に描く。

商売の売り上げや学校の成績ならこの慣用句は大歓迎。もっともここしばらく、耳にするのは芳しくないニュースの中ばかりである。全国の新規感染者数の単位はこの1ヶ月で百から万に変わった。陽性率や病床使用率のグラフも上に伸びる。今の変異型は重症化しにくいと聞いたところで心底安心できるはずもない。

不安に拍車をかけるのは、上昇スピードに人間が追いついていないように思えることだ。人手不足で保健所や医療機関の業務が滞り、保育園や学校から悲鳴が上がる。検査キットも不足気味という。頼みの綱となる3回目のワクチンが行き渡るのはいつになることやら。暴れるウナギに手を焼く北斎の絵が身につまされる。

政府は濃厚接触者の待機期間を短くする方針を明らかにした。これからは厳しい水際対策の緩和も焦点になりそうだ。数字の増減に一喜一憂してるだけでは前に進めない。日本国内での感染者初確認から2年がたった。つかみどころがないウイルスとの付き合い方を、もう少し覚えてもいい頃合いではなかろうか。