2/19 ロシア的魂

自前のコロナワクチンがあるにもかかわらず、ロシアの接種率は低い。欧州や日本は8割近くだが、ロシアは5割に満たない。世界平均を下回る。忌避の理由について、先立ってラジオで興味深い解説を聞いた。独特の文明観と強権的な統治の歴史が背景にあるという。

かの地の自然は厳しく、戦争と革命で数千万人の命が理不尽に失われた。そのために「病で死ぬのも運命」と人々は諦念に似た気持ちを抱くようになった。また長く続く強権政治は「本当に大事なことなら国家が強制するはず。そうでないのは不要だから」との理屈を民心に植え付けるに至った。ざっとこんな趣旨だった。

思い起こしたのが「ロシア的魂」「ロシア的なるもの」という言葉だ。詩人プーシキン、文豪トルストイドストエフスキーツルゲーネフロシア文学の大家はみな、この観念について自問自答してきた。彼ら自身も簡単に説明などできない。自然、宗教、歴史が複雑に絡み合い産み落とされた一個の謎のようなものだ。

同じ19世紀の詩人で外交官だったチュッチェフはこう表現した。「ロシアは理知では分からず/普通の尺度では測れない」(西周成訳)。

今、ウクライナを見つめる各国の首脳も同じ思いではなかろうか。トルストイプーシキンを愛読すると伝わるプーチン大統領。そのロシア的魂の行動原理を誰もが知りたがっている。