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5年前、批評誌「ゲンロン」が2号にわたり現代ロシア思想の特集を組んだ。ここで紹介されたのが「ソ連崩壊後のロシアを代表する右派論客」というドゥーギン氏の「第四の政治理論」という一文だ。プーチン氏を支持するロシア人の心の内を知ろうと、ひもといた。

論文は難解だが主張をまとめた一覧表に助けられた。自由主義共産主義ナチスも誤りだった。国や大衆ではなく「宗教的貴族」が政治と経済を仕切れ。その中心はツァーリロシア皇帝)だ。一見、極論ふうだが、近年ロシアではリベラル論者が次々と愛国主義に転向した。その旗手になったと同誌は解説する。

権威主義国の非合理性と遠めで見ていられるか。米国では昨年、選挙結果を力で覆そうと暴徒が議会に乱入した。先日は「女性の教育機会の向上と社会進出に不可欠な役割を果たした妊娠中絶の権利」(米ウォール・ストリート・ジャーナル)を損なう権利を最高裁が示し「生殖医療を根本から変える」と報じられている。

「ゲンロン」誌によれば、近年のロシアには「全体主義への感情的なノスタルジー」が広がっているそうだ。それが強さをうたうプーチン氏人気の土台になった。米国も「古き良き」時代への懐古が一定の人々の心をとらえた結果の分断ともいえる。後ろ向きな心理と空気が大国を覆い、世界を揺るがす。日本はどうだろう。