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きょうは「スポーツの日」。はるか昔の出来事のように感じてしまうが、政府は昨年、この祝日を7月23日に移動した。平和の祭典、東京五輪の開会式の日である。日本の伝統と今を世界に発信し、列島の祝賀ムードは最高潮に…。となるはずだった。

しかし、開会式直前に演出担当者が解任された。過去の不適切な言動が問題視されたのだ。様々な不祥事があった。それでも日本選手は躍動し、世界の人びとはボランティアの心のこもったおもてなしを称賛した。賛否が割れたコロナ下での五輪だったが、やっぱり開催してよかった。そう感じた人も多かったのではないか。

今はどうだろう。大会組織委員会の元理事が三たび逮捕された。五輪汚職事件をめぐる東京地検の捜査はまだ続く気配だ。スポンサーに名乗りを上げた企業が、契約料を一定額以内に抑えてほしいと元理事に依頼し、その見返りとして賄賂を渡した。起訴事実の中にこんな不正が含まれている。ちょっと待ってほしい。

組織委の財布に入るべきカネを、元理事がくすねたことにならないか。刑法に、賄賂は没収するという規定がある。捜査を尽くし、不当利得をすべて国庫に戻すのが筋だろう。組織委は公益財団法人で情報公開の対象外。契約内容はブラックボックスだ。今年のスポーツの秋は、利権の祭典の闇を徹底解明する秋(とき)でもある。