10/18 円安には利点もある

円相場のニュースに接するたび、自らの来し方を思い起こす。そんな人も多いのではないか。なにせ歴史的な円安である。政府・日銀による円買いドル売り介入は24年ぶり。14日には、32年ぶりに1ドル148円台まで下落した。当時はどんな世相だったのだろう。

「ニュースからくらしまで絵と新聞でわかる平成時代」なる本をめくると、登場する一家は長野冬季五輪に拍手し、パソコンimacのスケルトンモデルを自慢していた。7桁の郵便番号にとまどう人がいる一方、両手を広げつま先立ちし、映画「タイタニック」のヒロインをまねる若い女性もいる。

では32年前の90年は。防虫剤のCMから「もっと端っこ歩きなさいよ」が流行語となり、ティラミスが人気を博した。大蔵省(現財務省)が不動産向け融資の伸びを抑えるよう通達した「総量規制」はバブル崩壊の一因とされる。長い長い難路を経て、出発地と似た見通しの悪い分かれ道にたどりついた気がしなくもない。

だが、今の円安にはメリットもあろう。この何十年かでニッポンの様々な魅力は広く各国へ伝わった。その素地を生かし、先進国の中でも低調な海外からの投資を呼び込む。訪日外国人にも、土地ならではの体験を通じてリピーターになってもらう。「失われた30年」なんて言葉は踏みつけて、高く飛べるチャンスかもしれない。