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ポルトガルの宣教師のルイス・フロイス武田信玄のことを、破竹の勢いで力を増す織田信長を脅かす存在と評した。最近の経済ニュースを見て、かつて世界に紹介されたこの戦国の実力者が頭に浮かんだ。旗に金文字で記した中国の古典「孫子」のフレーズのことだ。

米連邦準備理事会(FRB)が利上げを決めた。上げ幅は27年7ヶ月ぶりの大きさという。パウエル議長は「強力なアクションが正当化されると判断した」と話す。「疾きことは風のごとく」。じつはインフレが進むのが予想より早く、追い込まれた。それでも日本に乏しい経済のダイナミズムがそこにはある。

かたやこちらは「動かざること」までその通りだが、先は少し違う。山のような景気浮揚を感じることもなく、低空飛行が続く。円安が進み、物価も上がる。もし利上げで対処すればどうなるか。信玄の旗にない孫子の言葉を借りれば、「動くことは雷の震うがごとく」。雷に打たれるのは日本経済だ。手詰まり感が深まる。

どうしてこうも活力に欠けるのか。気がつけば様々な指標で隣国に肩を並べられ、追い抜かされた。「人口1人あたりで比べればまだ大丈夫」という言い方も、いまやむなしく響く。薄れる世界での存在感。「人は城、人は石垣、人は堀」。人が減り続ける世の中になぜなった。このままでは未来に残すツケが大きすぎる。