12/2 2類から5類へ

その昔、落語家の誰かがマクラに使ったのが始まりだという。いわく「こんどとオバケは出たことがない」。忘れられた昭和言葉かと思いきや、ネット上に散見されて生き残っている。いつの世にも「こんど食事を」「近いうちに一度」は幽霊みたいなものだ。

新型コロナウイルス感染症法上の分類をどうするか。厚生労働省は、結核などが含まれる「2類」以上の位置づけから、季節性インフルエンザ並みの「5類」への変更に向けた対応を始めた。ウイルス出現から3年。さすがに通常医療の対象に移す機運が高まってきたようである。取り繕いの「こんど」でなければいい。

振り返れば、分類見直しの話は2020年夏に早くも表面化している。ウイルスが現在よりずっと手強かったころだ。それでも、厳格すぎる措置が医療を圧迫しているという指摘は多かった。議論は浮かんでは消え、「第◯波が去ったあとに」と先送りを重ね、ようやく今回の動きである。ただし、着地点は見えない。

オミクロン型への変異などにともない、コロナの致死率はずいぶん低下した。重症化率がインフルを下回る統計もあるという。過剰な対応をやめて、暮らしをもとに戻すときだろう。ちなみに「こんど」の本来の意味は曖昧な未来ではなく、明確な「このたび」である。用例をひとつ挙げれば「こんど5類に変えました」。