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・自動車王ヘンリー・フォードは1914年、従業員の日給を2倍にすると宣言した。分厚い中間層が経済成長をけん引するという考え方はフォーディズムと呼ばれる。

経営共創基盤グループ会長の冨山和彦さんは、現代にふさわしい新たなフォーディズムを、と説く。ユニクロの運営会社は国内従業員の年収を最大4割引き上げるそうだ。変革の波頭だろうか。

 

従業員の日給を2倍に引き上げる。そう宣言した経営者がいた。米フォード・モーター創業者ヘンリー・フォードである。1914年のことだ。ベルトコンペヤー導入による生産性向上の果実を労働者に還元し、自社の車を購入できる消費者に。そんな狙いだった。

チャップリンの名画「モダン・タイムス」は流れ作業に忙殺され、心を病んでしまう工場労働者を描いた。額に汗して働く人々は、報われないのか。映画の公開に先立ち、自動車王は資本主義の課題を意識していたのだろうか。分厚い中間層が経済成長をけん引する。この成長モデルを「フォーディズム」と呼ぶそうだ。

厚生労働省が、国内で初めて新型コロナウイルスの感染者を確認した、と発表したのは2020年1月16日。ちょうど3年前だ。コロナ禍は介護、流通、運輸サービスなどに従事する「エッセンシャルワーカー」によって社会が支えられていることを再認識させた。エッセンシャルとは「不可欠な」という意味合いだ。

現場を支える人々の賃金を上げ、分厚い中間層にすべきだ。経営共創基盤グループ会長の冨山和彦さんは昨年、「日経グローカル」誌上で説いた。現代にふさわしい成長と分配の新たなフォーディズムを日本から発信しよう、と。ユニクロの運営会社は国内従業員の年収を最大4割引き上げるという。変革の波頭だろうか。