3/9 分厚い中間層の形成

日本もかつては「総中流社会」といわれ、平等な社会だと考えられてきました。しかし2000年代以降、格差社会が到来したといわれます。そして現在、「新しい資本主義」を掲げる岸田文雄政権は賃上げや人への投資への支援を通じて、成長と分配の好循環を実現し、分厚い中間層の復活を目指しています。

なぜ、中間層の存在が重要なのでしょうか。それは、経済成長と民主主義の基礎となる存在だからです。経済的な観点からは、中間層の家計は教育投資に力を入れる傾向があり、それは社会全体としても人的資本の蓄積につながります。その結果、イノベーションや経済成長を生み出す原動力が生まれるのです。

また、中間層の衰退で所得分布が二極化すると、高所得層から低所得層への更なる所得移転が必要となるでしょう。その結果、社会保障制度の維持が難しくなったり、財源問題を巡る政治的対立が深刻化したりすることも考えられます。

中間層の衰退は、イノベーションの停滞や政治的分断を引き起こしかねません。経済発展と社会の安定には分厚い中間層が必要といえます。

(3/9 やさしい経済学より)