11/15 韓国の絵本文化

お隣の韓国で、初の絵本が出版されたのは1980年代末。ソウル五輪のころ経済成長をとげ、言論や出版の自由が広がったのが背景だという。日韓の絵本を紹介する、千葉市美術館で開催中の展覧会で知った。大正期から100年超の日本に比べ歴史の短さに驚く。

76年生まれのイ・ミョンエさんは子供のころ絵本を読んだことのない世代だ。大学で東洋画を学び就職するが、結婚と出産で退職。子育て中に子供に読む絵本が外国のものばかりなのに気がついた。2015年、海洋汚染がテーマの創作絵本が海外で受賞を重ねてデビュー。最近は100ページ近い実験的な新作も出版した。

日本を絵本界の「長老」にたとえるなら「壮年期」にさしかかったといえようか。絵本はこうあるべきだという固定概念が作者や読者になく、判型や内容も自由で多様なものが多いそうだ。「世界の読者を視野に入れている」(主任学芸員の山根佳奈さん)のも、この国らしい。音楽やドラマにつづき注目度を高めている。

今月、96歳で亡くなった松居直さんは「ぐりとぐら」を世に出した名編集者だ。1970年ころ国外で知られるようになった日本の絵本についてこう書いている。繊細でムードがある。でも、型にはまりがちで、語りかけるものが弱い。頭のかたい老人ではなく、創造的な長老であるために、心にとめておきたい言葉である。