4/10 人手不足と年収の壁

出張で利用した瀬戸内海のフェリーがずいぶん混んでいた。乗客の多くは訪日客。出航間際でもチケット売り場は長蛇の列で、駆け込み乗船が続いた。もっと便数を増やせばいいのにと時刻表を眺めたら、そこには小さな説明書きが。「人手不足で減便しています」。

最近、この手の場面に出くわすことが急増した気がする。安くて美味かった近所の料理屋も、店員不足を背景に無念の閉店に追い込まれた。空室があっても予約を断るホテルも出ていると聞く。コロナ明け、インバウンドもさあ復活という好機だ。なのに目の前でビジネスチャンスがこぼれ落ちていく。なんとももどかしい。

時給を上げれば働き手が集まる、そんな教科書的サイクルも簡単でないようだ。収入が増えると社会保険料が引かれ手取りが減る「年収の壁」が問題化している。厚生労働省は先週、最低賃金を底上げする制度改正を決めた。歓迎すべき流れなのだが、一方でパートが就労を抑えてしまったら人手確保にはつながらない。

あちらを立てればこちらが立たぬ。国も地方も、どうにも手詰まり感の極まる難題ばかりが目立つ昨今だ。ただ、だからこそリーダーたちは課題と実直に向き合うべきだろう。この統一地方選で信を得た知事たちも、きのう就任した日銀の植田新総裁も、もちろん岸田首相も。小手先を排し、正面から挑むかじ取りに期待する。