3/20 文化遺産への攻撃

アフガニスタン全土はいま「無音の爆撃」にさらされている。現地の考古学者の悲痛な声を国際的なアート専門誌が紹介していた。支配者タリバンが、また仏教遺跡を破壊しているわけではない。が、目に見える暴力よりも深刻な事態が国をむしばんでいるという。

遺跡の盗掘や不法な開発が放置され文化財が流出し、破棄される。タリバンの意に沿わない物品は博物館の地下に放り込まれ、闇に葬られる。教育制度がゆがめられ客観的な歴史や文化を教えられなくなった。人々が代々伝えてきたアフガンの「記憶」は、この先2代くらいの間にまるごとなくなる。学者はそう警告する。

まさに人ごとではないのだろう。ロシア軍が侵攻をつづけるウクライナで、文化遺産への攻撃の惨状を世界に向けて投稿するよう文化情報政策省が国民に呼びかけた。キエフ近くの村で歴史博物館が燃え、東部国境近くの古い木造校舎が焼けた。SNSに投稿された写真や映像にいい知れない喪失感がにじむ。

敵対する社会に長期にわたるダメージを与える。文化に対する攻撃は、そのための戦術とみなされるようになったとユネスコは危惧する。「ロシアは彼らと異なる私たちの伝統と歴史を消そうとするでしょう」。南部オデッサ美術館館長の予言を現実とさせぬよう、いかなる砲撃も「無音の爆撃」も許してはいけない。