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40年前の6月、日本武道館のステージにひまわり畑の風景が広がった。音楽バンド、オフコースの演奏会で「言葉にできない」という歌に合わせ、地平線まで広がる花を複数の巨大スクリーンに映したのだ。音楽と映像を組み合わせた演出の先駆例として語り継がれる。

映像は映画「ひまわり」の一部だ。3ヶ月前の小欄でも紹介した通り戦争で引き裂かれる夫婦の悲劇を描き、ソ連時代のウクライナでイタリア出身の監督が撮影した。ロシアの侵攻後は収益の一部を寄付する支援上映会が広がる。国花のひまわりは抵抗の象徴になり、反戦デモでは平和の花として掲げる様子を見かける。

美しい畑は観賞用ではなく、ひまわり油のためのものだ。世界の生産量の3割、輸出量なら半分をウクライナが占める。生産設備が破壊され収穫も加工もままならない。欧米からの報道では、菜種油などの他の食用油の価格が上がり、店によっては棚から一斉に消えた。小麦も含め命の糧である食料の流通が戦のせいで滞る。

武道館の「言葉にできない」はラブソングの形を借りて人のつながりのもろさ、それゆえの尊さを歌い上げ、名画が訴えたひまわり畑の美と歴史が重なった。今も人々に愛され続けている。人間も文化も命を支える営みも、国境や時代を超えてつながっている。戦争とはそれらを突然、断ち切る行為なのだと改めて感じる。