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公園や川の土手を曼珠沙華が彩ったお彼岸も、昨日で明けた。本来ならナシにカキなど実りを供え、故人を静かにしのぶはずが、今年はどうも気持ちの収まりがつかなかった感じだ。安倍晋三元首相の国葬をめぐって賛否が激しく対立しているゆえだろうか。

人々の間に深い分断が生じているようだ。本社とテレビ東京による今月の世論調査では、国葬に反対が60%、賛成が33%と、ほぼ2倍の数字。他社の調査でも、同様の結果だった。「首相在任期間が最長」「内政、外交で大きな実績があった」と岸田文雄首相は理由を述べたが、国民の多くは納得していないとみえる。

確かに、国会の閉会中審査への数時間の出席だけでは「丁寧な説明」を尽くしたとは言いがたい。加えて、元首相と旧統一教会の関係の調査も「限界がある」と後ろ向き。看板の「聞く力」はどこへやら、日光東照宮の「見ざる・聞かざる・言わざる」の彫刻の体で乗り切ろうとしていると思われても仕方あるまい。

連日の積極的な弔問外交も色あせて見えるかもしれない。岸田首相の誕生から来月4日で1年。「新しい資本主義」など鳴り物入りの政策も熟しきっていない。物価高の克服などの対策を含め、人々は果実を手にするより先に、政権という樹への期待を失いつつあるのではと心配になる。秋の日はつるべ落としという。