12/25 駅でのドラマ撮影

東京の会社員や学生は全員、京王沿線に住んでいる。もちろん事実は違うが、かつて映画やドラマの好きな人たちの間にそんな定番の冗談があった。多くの鉄道会社が東京圏にあるが、通勤・通学場面の撮影に協力してくれる会社はほぼ京王電鉄に限られていたからだ。

例えば1995年10-12月期には「未成年」「恋人よ」など5作のドラマに京王の駅や車両が登場した。山田太一原作・脚本の「丘の上の向日葵」は、小説版の通勤経路であるJRと東急を、ドラマ(93年)では京王線に変えた。面倒な撮影協力に応じている理由を、当時同社は「鉄道は公共物だから」と説明していた。

その後、イメージアップや知名度向上などの効果が知られるにつれ、少しずつだが他社も撮影を受け入れていく。小田急電鉄は今年4月、駅や車両の撮影を一括して受け付ける窓口を開設した。先日最終回を迎えたドラマ「silent」は同社の世田谷代田駅周辺で撮影され、乗降客や不動産検索数が2割増えたそうだ。

ニューヨーク市といえば、一時は犯罪や散乱するゴミの印象が強かった。後にしゃれた恋愛映画や働く女性を描く作品が相次ぎ登場し、観光客増加にも一役買っている。米国や韓国では街なかの撮影に行政が協力的だ。鉄道に限らず日本、特に東京で大がかりな撮影は難しいとの声が映像業界にある。惜しい話だと思う。