2/6 北京五輪開会式

北京冬季五輪の開会式を演出した張(チャン)芸謀(イーモウ)監督は色の使い方がうまい。デビュー作「紅いコーリャン」はセンセーショナルな内容が物議をかもしたが、それを強調したのが「赤」という色。花嫁衣装の赤い布、本来は無色透明なコーリャン酒まで真っ赤にして使っている。

文化大革命は終わったが鬱屈した気分は解放されず、人々は「生命感や狂おしいまでの情熱」を欲していたとインタビューで話している。自身も文革の再教育で農村を追われ、工場労働者を経験。共産党文革のシンボルである色にそんな庶民の思いを語らせた。当局は慌てるが、切実な表現が国内外で評価された。

おとといの開会式のテーマは二十四節気。風にそよぐ草原の緑に目を洗われるようだった。競技場は赤くライトアップし、雪や氷の色で彩った。色の演出は完璧、そう思わせるなか目を引いたのが「中華台北」の名のもと、硬い表情で行進してきた台湾の選手団。そしてウイグル族出身と伝えられる聖火をともした選手だ。

中国は五輪の精神に反し自国の法律や規制に違反する選手の行動や発言を処罰すると発表。「政治」が持ち込まれないよう躍起だ。選手に「本心」を表現させず「演技」を強いる一方、国際的な批判にかまわずトップは外交成果を誇る。五輪を政治利用するのはどちらか。巧みな演出の後ろ側にもしっかり目を凝らさねば。