2/11 ウクライナを巡る緊張

誰が祖国を二つに分けてしまったの。音楽バンド、ザ・フォーク・クルセダーズが1960年代に演奏した「イムジン河」の一節だ。朝鮮半島生まれの歌を元に松山猛さんが日本語詞を補い、今も広く歌い継がれる。題は分断ライン近辺を流れる実在の川を指す。

2002年の再結成コンサートでメンバーのきたやまおさむさんが語った。「この歌は今も現実を歌い上げています」。さらに「イムジン河は世界のどこにでも、そして今日、私たちの間にも流れている川といえそうです」。このライブから20年たつ。半島分断は変わらず、世界や人々の亀裂は加速しているかのようだ。

ウクライナを巡り緊張が増している。もしもロシア軍が侵攻したら、国土の中央を流れる川でウクライナという国が東西に分割される可能性もあると、専門家の予測にあった。冷戦時代の「鉄のカーテン」が場所を変えて再現されてしまうのか。しかも今回は「進歩的な社会体制の普及」という一応の大義名分すら無くだ。

ウクライナ語を専門とする外務省の職員が、同省のサイトにこう記す。ロシア、ポーランドと国境を接し、トルコ、ブルガリアとも近いため、地方ごとに伝統が異なる見どころが多い国。文化の多様さは強国に囲まれる危うさと表裏一体だ。明日を案じ、右往左往する人々の心のうちをリーダーらは想像できないか。