3/12 韓国の政権交代

「夢判断」などの著作で知られるジークムント・フロイトは第1次世界大戦をはさみ、思想面で劇的な変化をとげた。近代兵器の導入が、欧州で引き起こした未曾有の惨禍の影響もあったのだろうか。人間には、破壊を求める攻撃的な欲動があると考えるようになった。

「ひとはなぜ戦争をするのか」をテーマにしたアインシュタインとの往復書簡も、そんな考えをもとに書いた。戦争に駆り立てる動機として「攻撃や破壊への欲望」(浅見昇吾訳)をあげたのだ。ウクライナに侵攻した「独裁者」に対して、精神分析を実施すべきだとの声が欧米にある。フロイトならどう判定するだろう。

侵攻から2週間あまりで、私たちがずっと慣れ親しんできた世界の風景が一変した。半島の北の国が日本の近くの海に頻繁に撃ち込むミサイルが、より危うく目に映るようになった。台湾統一への野心を隠さない隣の大国の動向も、これまで以上に気がかりになってきた。動揺せずに、現実を直視する心のありようが大切だ。

情勢がきな臭さを増すなか、韓国で政権交代が起きた。フロイトは「戦争の拒絶、それは平和主義者の体と心の奥底にあるもの」と説いた。平和を祈る澄んだ目で見れば、どんな日韓関係が望ましいのか明らかだ。「過去よりも未来をどうするかが両国の利益」と語る大統領の登場は、その実現のきっかけになるだろうか。