10/3

「今年世界中で多くの尊い命が失われました」「目を覆いたくなることもたくさんありました」「僕たちに今、何ができるでしょうか」。19年前、NHK紅白歌合戦で大トリを務めたSMAPのメンバーは、こう語った後で「世界に一つだけの花」を歌った。

「みんながすべての人に優しくなれたら、きっと幸せな未来がやってくる」との言葉もあった。イラク戦争が起き、反戦を掲げた集会などでこの歌が合唱された年だ。時を経て、なお同じ呼びかけが通用しそうな世界の現実が悲しい。ロシアによるウクライナ侵攻は隣国の領土に対する一方的な「併合」宣言に至った。

この戦争で冷戦終結以来の平穏が破れたとの声も聞く。しかしこの間も実は、戦争や内戦は繰り返されてきた。イラクコソボ、シリア…。100年続く平和を願う一青窈さんの「ハナミズキ」、Mr.children「タガタメ」などは、命の大切さを訴え平成の反戦歌として口ずさまれた。

世界がまだ平和とはほど遠いことに皆がもっと心を砕き、危険の芽を摘んでいれば現在の事態は避けられたのか。SMAPが17年前に発表した「Triangle」という歌が今、聴かれているという。「精悍な顔つきで 構えた銃は/他でもなく 僕らの心に/突きつけられてる」(作詞・市川喜康)。歌の一節が胸に迫る。