3/30 マイダン革命

たった数時間なのに、見終わるころには登場人物が他人とは思えなくなる映画がある。ウクライナのマイダン革命を追ったドキュメンタリー「ウィンター・オン・ファイヤー」がそうだ。2013年〜14年、自由と民主主義を求めて圧政に抗った人々の93日間に密着した。

親ロシアの大統領が約束を破って、EU加盟への道を閉ざした。憤った市民は広場(マイダン)に集まる。女性も老人も幼子もいる平和的なデモ行進に、武装した大統領の親衛隊が襲いかかる。多くの犠牲を払いながらも誰も諦めない。「子どもたちの未来を守りたい」。口々に語るどの顔にも勇気と希望の光が宿っていた。

あれから8年。どうか、みな無事でと忘れがたい面影を思う。弁護士も建築家も路上生活者もジャーナリストもホームレスも赤ん坊も母親もいた。様々な宗教の指導者は、今度も祈りつつ砲撃に耐えているかもしれない。彼らが命懸けで守ろうとした未来が目の前で踏みにじられている。現地の映像を見るたびに胸が詰まる。

マイダン革命時、キエフの歴史あるミハイル修道院は市民の要請を受けて全ての鐘を一斉に鳴らした。1240年にタタール人が街に侵入してきたとき以来と、映画の中で修道士が語っていた。鐘は今、果たして鳴っているだろうか。一刻も早く危機ではなく、平和と自由を知らせる響きに変わるよう、願わずにはいられない。