11/27 芸術を汚す活動家

ゴッホ1888年ゴーギャンと共同生活を始めた。仲間たちと一緒に作品を制作するアトリエを作るという夢を実現するためだった。ゴーギャンを迎えようと、部屋の装飾用にひまわりの絵を描いた。だが2人の個性がぶつかり合い、共同生活はすぐに終わった。

世界的に知られた芸術作品が、活動家に襲撃されるという事件が後を絶たない。ゴッホの「ひまわり」はトマトスープを、クリムトの「死と生」は黒い油をかけられた。ガラスで守られているとはいえ、異物で絵が覆われるさまはあまりに無残だ。自動車に絵を描いたウォーホルの作品は小麦粉をじかにかけられ、白く染まった。

気候変動対策に真剣に取り組むべきだと訴えるのが狙いという。石油を使うのをやめるよう呼びかけるシャツを着た活動家もいた。環境問題が大切なのは分かるが、なぜ作品が標的になるのか。芸術と命のどちらが大事なのか問いかけたい、というのが彼らの動機。それが議論を起こすきっかけになる。そんな理屈らしい。

ゴッホが世を去った後、ゴーギャンは椅子にひまわりを置いた絵を描いた。黄色い花を肘掛けが包み込む椅子は、ゴーギャン自身の象徴との見方もある。研ぎ澄まされた感性が生み出した作品は、芸術家の魂の結晶だ。人はそれに触れ、ときに生きる力を得る。注目を集めるために作品を汚すやり方が、人の心に響くだろうか。