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・老朽化や高齢化に悩む団地は多いが、一方で工夫を凝らした再生例も増えている。

団地の一室を食堂にしたり、若いクリエーターに部屋を貸しにぎわい作りに協力してもらう。日本人と外国人が住むシェアハウスになった事例もある。人の交流の舞台になっているのが共通点だ。

 

不良っぽさが売りのロックバンド、アナーキーによる往年の人気曲に「団地のおばさん」がある。俺たちを横目で見ながら、ああなってはいけないと我が子に説く「一流とエリート」たちめ、という反抗の歌だ。最新の設備と広場に囲まれた団地は最先端の住居だった。

近年、老朽化や高齢化に悩む団地は多い。しかし、きのうの本紙朝刊で「私見卓見」欄が掲載した大阪府住宅供給公社職員の投稿によると、古い建物をうまく生かす再生例も増えている。団地の一室を食堂にして高齢者が集う場にしたり、空き部屋を若いクリエーターに貸してにぎわい作りに協力を仰いだりと工夫を凝らす。

「団地は日本の縮図。社会課題解決のヒントもここにある」と投稿者は説く。以前取材した東京の団地は、改装で近くの大学に通う日本人と外国人が住むシェアハウスに変身した。敷地内に公園を設け地域の人を呼び込む、駐車場を減らし貸し菜園を始めるといった実例もある。共通点は人の交流の舞台になっていることだ。

同じ朝刊の1面は、情報技術を使った国主導の「デジタル街づくり」の多くがうまくいかなかったとの独自調査を報じている。地域のニーズを見極めずに外の企業に丸投げしたのが敗因らしい。デジタルを使って何をするか。出発点から地域の人を巻き込めば多様な案が集まり、準備そのものを通じて人の交流も促せたはずだが。