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・「昔はよかった」と思える時代はいつなのか。

 

「昔はよかった」。ある年齢を過ぎると、ふとそんなふうに思ってしまうことがある。古きよき時代とはいつのことなのか。米国で行われた調査によると、1930年代と40年代に生まれた人は50年代を、60〜70年代生まれの人は80年代を最もいい時期だと考えている。

スウェーデン生まれの歴史学者、ヨハン・ノルベリ氏の著書「OPEN」(山形浩生・森本正史訳)で紹介している逸話だ。人は青年期と成人初期の記憶を、他のどの時期よりも頻繁に思い返すことが背景にあるという。様々なことを初めて体験し、アイデンティティが形づくられる。時代の印象は世代ごとに異なる。

「失われた30年」も、聞く人によって違って響く言葉だろう。それ以前を知る人にとっては苦みを含んだ実感を伴う。では平成以降に生まれた人はどうか。若い女性の起業家にたずねてみると、答えは「そんなふうに思ったことはありません」。大学生のとき東日本大震災を経験し、新たな価値観を前向きに模索してきた。

きのう図書館に行くと、受験生が最後の追い込みに励んでいた。がんばれ、と思っていると見慣れた光景にはっとした。みんなマスク姿だ。彼らにとっての3年間は。いや、ふり返れば宝石のような思い出が必ずある。きょうから共通テストが始まる。その先にはわくわくするような学びと挑戦がきっと待つ。未来がまぶしい。