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あなたの新型コロナの医療費は、しめて61万円です。昨年、郵送で届いた医療費明細に目を丸くした。退院時の支払窓口は素通りした。自己負担はゼロと説明されたからだ。いくらかかったのか、気に留めないままだった。

改めて額を知らされるとその大きさに驚く。パンデミックが世界を覆い始めて3年。手探りの中で日本が選択したのは、治療やワクチン接種の費用を原則個人に負担させないやり方だった。確かに未知の病の恐怖に経済的負担が重なれば、社会が不安定化しかねない。他方で国のお金も無尽蔵にあるわけではない。

新型コロナの感染症法上の分類を季節性インフルエンザ並みの「5類」に移すよう、岸田首相が指示した。医療費も段階的に自己負担が生じるとみられる。重症化率をはじめ最新の知見に照らせば、コロナを「普通の病気」ととらえるのは理にかなう。低所得世帯などに配慮しつつ、負担の適正化を図ることが重要だろう。

顧みれば危機対応下とはいえ、甘い制度設計が招いたゆがんだ支出膨張も目立った。持続化給付金では大量の不正受給が起きた。病床確保の補助金を受けながら患者を断り黒字化した病院もある。自戒を込め、公金の使い方には気を抜かず目を凝らさねばなるまい。倍増の防衛費も異次元の少子化対策も、同じことである。