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先日、家族の急病で救急搬送のお世話になった。救急車はすぐに来てくれたものの、昨今報じられているように搬送先が見つからない。「永遠に決まらないことはありませんから」。救急隊の励ましに感謝しつつも、苦しむ病人を前に待つ時間は果てしなく長く感じた。

▼病院決定までは1時間余り。幸運だったほうなのだろう。隊員は「この前は4時間でした」と言っていた。聞けば、病院から詳細な状況説明を求められ、長いやりとりの末に結局は受け入れ拒否となる例が最近多いのだという。「病床に空きがないなら最初からそう言ってくれれば早いのに」との隊員の一言が耳に残った。

▼新型コロナ禍は日本の医療の脆(もろ)さを映し出した。コロナ対応は発熱外来などに限られ、病床は瞬く間に埋まり他の病気の治療にも響いた。感染症法上の「5類」になれば、幅広い医療機関で診療可能になると国は説く。だが現場には早くも「感染力が強いままでは困難」との見方がある。政府の想定通りにいくのだろうか。

▼政治に実効性を求める声は切実だ。多くの人が必死に働き、育て、ときに病んでいる。岸田首相の「育休中にリスキリング(学び直し)」発言に批判が出たのも、内実を伴わない印象だからだろう。うわべのキャッチフレーズで取り繕いつつ効果の薄い施策を続ける。そんな余力がこの国にないことは、みな気付いている。