4/12 検察官の責任とは

司法記者だったころ、刑事裁判をよく傍聴した。証拠調べが終わると、検察官が被告人をどの程度の刑にするのが妥当か、意見を述べる。この紋切り型のセリフを何度聞いたことか。「被告人は罪責を逃れることに、汲々とし」。真摯な反省がないと、糾弾するのだ。

聞き慣れない業界用語も飛び交う。弁護人が証人を申請する際に、裁判官が検察官に意向を確認する。検事さんは事務的に「しかるべく」と述べ、軽く頭を下げる。どういう意味なのか。積極的に同意するものではないが、裁判所の判断にお任せします。取材を重ねるうちにそんなニュアンスであることが分かった。

「7月10日までに、3ヶ月必要」。死刑が確定した袴田巌さんの裁判をやり直すための再審公判に向けた協議があり、検察側は立証方針を保留した。再審開始を決定した東京高裁は、証拠のでっち上げの可能性を指摘した。反論し、有罪立証を続けるのか。それとも、国会での質問などを避けるために、会期末まで待つ作戦なのか。

検察庁法は、検察官を「公益の代表者」と形容する。しかし、はた目には起訴をした責任を逃れることに汲々としているようにも見える。あの業界用語を耳にする局面が近いのかもしれない。「裁判所において、しかるべく判決を…」。今度は胸に手をあて、真摯に総括すべきだろう。公益の代表者の自負があるのなら。