6/24 好奇心と人命

土星の周囲を回るたくさんの衛星の一つに「タイタン」がある。窒素を中心とした分厚い大気に覆われ、可視光で表面を見ることができないこの衛星には、ある特別な期待が寄せられている。太古の地球に似ており、生命が存在する可能性が指摘されているのだ。

好奇心を大いに刺激するこの衛星と同じ名前の潜水艇が行方不明になり、海の底で破片が発見された。沈没したタイタニック号の残骸を見学する観光ツアーの最中だった。海中から「たたく音」がするとの報に、一時かすかな希望の光が見えた。だが昨日届いたのは「水圧で破壊された」という最悪の知らせだった。

大勢の犠牲者を出した事故は、人災という要素がどこかに大抵ひそむ。「不沈船」と呼ばれたタイタニック号は積んでいた救命ボートが乗船者に必要な数に遠く及ばず、しかも限られたボートさえきちんと使われていなかった。今回の事故も、のぞき窓が水圧に耐えられるものではなかったためとの見方が浮上している。

人間が海の中や宇宙に活動の舞台を広げることができたのは、旺盛な好奇心や冒険心のおかげだ。だがそこは命の危険と隣り合わせの空間でもある。タイタニック号の事故を教訓に海で人命を守るための国際ルールができた。タイタンは守るべきラインをどこで見誤ったのか。その究明という重い課題が関係者たちを待つ。