2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

7/29

大手企業の社員が、一時的に仕事を離れ新興国で社会活動に従事する。そんな留学ならぬ「留職」というユニークな研修の機会を、あるNPO法人が企業向けに提供している。これまで約40社から200人を超す社員が参加し汗を流したが、コロナ禍で中断した。 今年秋、…

7/28

秋葉原殺傷事件の加藤智大死刑囚は犯行前年、職もなく上野の駐車場で車中泊していた時期がある。職務質問した警官は、励ましの言葉をかけた。管理人も「駐車料金は年末でいい」と背を押した。そんなやりとりで一度は気力を戻し、仕事も再開する。なのに…。 7…

7/27

かつてスペイン風邪が世界で大流行したとき、日本の著名人も少なからず感染した。芥川龍之介もその一人だ。1918年11月から翌年にかけての書簡にはこんな言葉が並んでいる。「スペイン風でねてゐます」「僕のはたちが悪いんぢやないか」「辞世の句も作つた」 …

7/26

去年の今ごろは何をしていたのだろう。新聞の過去記事を読み返すと、当時の手に汗握る興奮がよみがえった。東京五輪・卓球混合ダブルス決勝で、水谷隼・伊藤美誠がフルゲームの激闘の末、絶対王者の中国ペアを下した。日本卓球界初の金メダルに、列島は沸い…

7/24

小説家の開高健はルポの名手でもあった。ある夏、各地でレジャーの現場を訪ね歩き、3ヶ月にわたって週刊誌に見聞記を連載した。後に「日本人の遊び場」として本にまとめている。ボウリング場や避暑地、遊園地などと並べて取り上げたのが神奈川県の湘南海外だ…

7/23

服喪は強制できない。しかし追悼ムードは高めたい。1967年の吉田茂元首相の国葬の経緯を政府がまとめた「国葬儀記録」には、国の模索が表れている。企業に早退を認めるよう促し、テレビやラジオにも協力を求める。あくまで自主的な対応を「お願い」する形だ…

7/22

「悪党の一味」などと使われる一味とは中世の古い儀式が由来という。一味神水。一揆や戦におもむく人々が、神前にそろって水を飲む。そうやって結束を誓った。「同じ釜の飯を食う」のも、同じ場所でともに「一味」を味わいきずなを深める行いだ。 原田信男著…

7/21

北京冬季五輪が開かれた今年2月、兵庫県の俳句同人誌「里」にユニークな特集を組んだ。題して「羽生結弦を季語にする」。55句が載っている。例えばこんな句である。「光あれ羽生結弦と東北と」(藤井美琴)。被災したふるさとに寄り添い続けた姿が眼に浮かぶ…

7/20

この3連休、まったく予定がなく、映画館や寄席に足を運び、暇をつぶす仕儀となった。たまたま上映していた「からかい上手の高木さん」という青春アニメを見た。原作は同名の人気漫画と聞く。瀬戸内海に浮かぶ島を舞台に、中学3年の男女のひと夏を描いている…

7/19

夜空の星を、しばし見上げる。広い広い宇宙へのおそれ、小さいけれど二つとない命の重みなど、さまざまな感慨がわいて来るに違いない。9年前のきょう、米欧が共同開発した探査機カッシーニが、太陽を隠したかたちの土星の近くから、遠く地球を撮っている。 …

7/18

誰にでも、思い出の写真があるはずだ。初めて生まれた我が子のカエデの葉のように小さな手のひらを、クローズアップで撮った1枚。いまは亡き親族のセピア色の笑顔。写真は過ぎ去った日々の記憶を喚起してくれる。来し方や行く末に、思いをはせるよすがなのだ…

7/17

あの喧騒から間もなく1年がたつ。競技場の内側より、ある意味話題の多かった五輪の舞台裏を知りたくて、公式記録映画「東京2020オリンピック SIDE:B」を見に行った。もっとも印象に残ったのは、狂言師・野村萬斎が率いる演出チーム解散のシーンだ。 降板を決…

7/16

「墨守」という言葉に、もともと否定的な意味はなかったらしい。古代中国の思想家、墨子が楚の攻撃から宋の城を守り抜いたことにちなみ、守備がとても固いことを指していた。それがいつの間にか、旧習にこだわるばかりで融通がきかない様子を言うようになっ…

7/15

評論家の犬養道子さんは1932年の五・一五事件で祖父の犬養毅首相が銃撃されたと聞き、現場の官邸に駆けつけた。詰めかける大勢の警官。「子供心にもそれは、笑うべき無駄な手遅れの警護であった」。後に著書で厳しく突き放している(花々と星々と)。 襲撃犯…

7/14

寺田寅彦は「芸術にはそれぞれ国民の国民的潜在意識がにじみ出ている」とし、例として映画を挙げた。物理学者であり、随筆家でもあった彼がそう記したように、各国の映画にはそれぞれ違った魅力がある。とりわけ印象的なのが、インド映画の「ハーフバリ」だ…

7/13

「生ビールの中、ひとつ」。疲れを癒そうと入った居酒屋で注文し、ふと壁を見ると、コメどころから日本酒入荷の告知。1合1300円とか。さてどうするか。仏産ワイン「ボージョレ・ヌーボー」が大幅値上げと聞き、下手な寸劇を頭の中で組み立ててみた。 ご存じ…

7/12

「三十年以上、旅とともに暮らしてきた」。そう語る作家、角田光代さんが2度訪れた島国がスリランカだ。22年前と6年前。16年間で街並みは変わったが、「何よりも驚いたのが、人の親切さがまったく変わらないこと」だとエッセー集「大好きな町に用がある」に…

7/11

公選院、特議院、公議院、などなど、意見百出だったらしい。戦後まもなく、新しい議会制度を設計するときの話である。皇族や華族で構成していた貴族院に代わる第二院の名前をどうするか。当時の憲法問題調査委員会の議事録には「参議院アタリガ無難」とある…

7/10

1976年に公開された映画「タクシードライバー」は名作の誉れ高い。ベトナム戦争に従軍した元海兵隊員は帰国後、疎外感を募らせる。殺傷力の高い銃で武装し、遊説中の米大統領候補の殺害を企てた。だが、不審な行動に気づいた警察官に阻まれ、未遂に終わる。 …

7/9

中国元朝時代の官僚・儒学者、張養浩がこんなことを言っている。恨みも誹謗も受け止め、なすべきことを果たすのが宰相の責務である、と。いまにも通じる政治家の心構えだろう。安倍晋三元首相もしばしば、「国民のために批判を恐れず行動する」と口にしてい…

7/8

イソップに「王様をほしがる蛙(カエル)」という物語がある。為政者がいないことに悩んだ蛙たちが、神様に王様をくださいとお願いに行く。神様はしょせん蛙のことだから、と最初は木切れをくれてやる。が、蛙は満足せず、もっとましな王様に代えてほしいと…

7/7

近くにあるJRの駅の周りに、短冊でいっぱいになったササが何本も飾ってあった。健康や受験、恋愛に関する定番のたくさんの願いごと。「ウルトラマンになりたい」は映画の影響か。そんな中で時節柄目立ったのが、「世界が平和でありますように」という言葉だ…

7/6

あふれるように、という表現ではまだるっこしい。噴き出すように短歌ができるようであった」。俵万智さんのデビューを後押しした佐々木幸綱さんは、「サラダ記念日」の跋文にこう記した。1987年刊。たびたび読み返すが、噴き出す言葉の勢いは強烈だ。 表題作…

7/5

6月に開館したノルウェー国立美術館で館長のカリン・ヒンズボさんに会う機会があった。まだ40代の女性美術史家。国を代表する施設のトップとしての抱負を聞くと、力強く答えてくれた。「これまで美術館に来たことのないすべての人を迎えるために全力を尽くす…

7/4

手塚治虫さんの漫画「火の鳥・復活編」にロビタという生活支援ロボットが登場する。家事から遊び、子守まで皆が頼り切るが、うち1体が無実の罪で処分される。実は意識がつながっていたロビタらは一斉に職務を放棄し、人々は泣き叫ぶ。「お願い、もどってきて…

7/2

1953年から16年間にわたり、米連邦最高裁長官を務めたアール・ウォーレンは自身を指名したアイゼンハワー大統領の「期待」をことごとく裏切った。共和党の元カリフォルニア州知事で、戦時中は日系人の強制収容を推進した人だ。ところが就任してみると…。 こ…

7/1

20世紀の幕が開いて間もない1901年2月2日。夏目漱石はロンドン中心部の人混みの中にいた。64年近くにわたって在位し、81歳で没したビクトリア女王の盛大な葬列を見物するために。よく見えるように下宿屋の主人が肩車をしてくれた、と日記につづっている。 大…