2022-01-01から1年間の記事一覧

10/25 習近平政権3期目

マオタイ酒のふるさと、中国の南西部、貴州省に遵義という街がある。中国共産党の聖地のひとつだ。1935年、国民政府の攻勢に退却を強いられる中、ここで重要な会議があった。農村を根拠地とする戦術を唱えた毛沢東が支持を集め、主導権を確立したのである。 …

10/24 駅弁の魅力

全国の時刻表が載る月刊誌「時刻表」の使い道は広かった。客の少ない鈍行の夜行列車では堅い肘掛けに置き枕代わりに。巻末の旅館案内はネットのない時代に重宝した。楽しみは各ページ欄外の駅弁案内だ。名称と値段だけという素っ気なさが想像力をかき立てる…

10/23 ポンチ絵の精神

幕末から明治にかけて「ポンチ絵」なる言葉がちまたで大はやりした。風刺のきいた漫画の意味で、日本初の漫画雑誌「ジャパン・パンチ」が由来だ。記者として来日していた英国人のチャールズ・ワーグマンが母国の「パンチ誌」をまねて明治前夜に創刊した。 庶…

10/22 拉致被害との闘い

ずっと前に取材で訪れた新潟・佐渡島の国府川を思い出している。田畑に囲まれ、人家はまばら。のどかであり、少々寂しいようでもあり…。日本各地で見られる原風景といえるかもしれない。最近はトキの野生復帰を目指して自然再生の取り組みが進んでいるそうだ…

10/21 仲本工事さん

あしたから改心し、勉強を頑張るつもりだ。つきましてはトンボ鉛筆を買ってほしい。1970年代に小学生だった昭和の子なら、親にこんな虚偽の陳情をした記憶をお持ちだろうか。当時、人気絶頂だった「ザ・ドリフターズ」の各メンバーの人形が景品でもらえたの…

10/19 解散命令のハードル

企業への死刑判決。そう呼ばれる規定が会社法にある。824条の解散命令だ。企業が犯罪行為を重ねるなど公益を害し「存立を許せない」場合に、裁判所が解散命令を出せる。申し立ては株主、顧客、法相もできる。ただこの条文、適用された例がほとんどない。 な…

10/18 円安には利点もある

円相場のニュースに接するたび、自らの来し方を思い起こす。そんな人も多いのではないか。なにせ歴史的な円安である。政府・日銀による円買いドル売り介入は24年ぶり。14日には、32年ぶりに1ドル148円台まで下落した。当時はどんな世相だったのだろう。 「ニ…

10/17 中国の若者たちの希望

今から20年以上前、多くの中国人が一本の映画に涙した。舞台は1980年代の香港。中国がまだ貧しかった頃、夢を抱いてこの地に渡った男女が出会い、運命に翻弄されてすれ違う。タイトルは「ラヴソング」。10年に及ぶ、切なくて美しい恋のストーリーだ。 物語は…

10/16 出勤かリモートか

「あなたはあまり会社に来ないからわからないと思うけど」。会議の場でこんなけん制球が飛ぶことがあるという記事を読んだ。出社組とテレワーク組が混在する場で、前者が後者に反論したい際に用いる。社内事情に疎くなりがちな在宅派の弱点を突く作戦だ。 出…

10/14

2011年は東日本大震災が起きた年として、私たちの胸に深く刻まれている。でも、同年7月、新潟、福島両県を集中豪雨が襲い、死者・行方不明者が出たことを覚えているだろうか。多くの住宅が被害を受け、自衛隊が災害出動した。この年、天は福島に非情だった。…

10/13

訪日客が多少戻っていると聞き、夜の浅草寺に寄ってみた。仲見世通りが閉まった後も、月光を浴びる雷門を外国人が次々とくぐってゆく。イタリアからという2人組に記念撮影を頼まれた。「確かに日本の渡航制限は厳しかったけど、国ごとに事情はある」と話して…

10/12

「旅」は季語ではないが、相性がいいのはやはり秋だろう。「旅心高まりきたる秋扇」(村上三良)。乾いた風が頬をなでるこの時期は、通勤のターミナルからふらりとどこかへ遠出したくなる。そういえば、林芙美子の「放浪記」も「秋が来たんだ」の言葉で始ま…

10/10

きょうは「スポーツの日」。はるか昔の出来事のように感じてしまうが、政府は昨年、この祝日を7月23日に移動した。平和の祭典、東京五輪の開会式の日である。日本の伝統と今を世界に発信し、列島の祝賀ムードは最高潮に…。となるはずだった。 しかし、開会式…

10/9

ロシアが一方的にクリミアを併合した2014年3月、若田光一さんは地上から400キロ離れた国際宇宙ステーションの船長に就いた。滞在する6人の飛行士のうち5人はロシア人と米国人。率いるのは正直、難しかったと4年前の日経新聞夕刊のコラムで語っている。 宇宙…

10/8

「音楽なんか無駄なんじゃ。そいじゃけえこそ、いつまでも輝いとる」。津原泰水さんの小説「ブラバン」にそんなせりふがある。舞台は広島。高校のブラスバンド部で活動した主人公たちは40歳を過ぎ、仲間の死を機に演奏会の開催をめざす。その過程で出た言葉…

10/7

「秋刀魚の味」を62分で見た。小津安二郎監督の、この名高い遺作は113分の長編である。それを動画配信サービスで、再生速度を1.8倍に上げて眺めてみたのだ。昨今しばしば物議をかもす倍速視聴は、ゆったり時間が流れてゆく小津ワールドをどう映すか…。 笠智…

10/6

スーパーに銀杏(ぎんなん)が出回るようになった。週末にふらりと訪れた郊外の寺でも、参道の露店で袋詰めの実が銀白色に光っていた。街路樹になっている歩道では、落ちて潰れた実が足元で存在感を放つ。キンモクセイとかわるがわる鼻に届く、これも秋の便…

10/5

それは、「大西洋を越えた新旧両大陸のデモクラシーのシンボル」だった。1876年の建国100年を祝い、フランスから米国へ贈られた自由の女神像。像と台座の制作費用をそれぞれの国が負担し、労働者、移民、子どもらがわずかな金を出し合い、完成にこぎつけた。…

10/4

「余はこの類の事に不賛成にてその催もなさざりしが」。原敬が残した膨大な日記にこんな記述がある。日付は1919年9月29日。この日首相に就いて1年を迎えた。「記念の祝宴を開いてはどうか」と勧める意見があったらしい。「不賛成」の理由は書いていない。 コ…

10/3

「今年世界中で多くの尊い命が失われました」「目を覆いたくなることもたくさんありました」「僕たちに今、何ができるでしょうか」。19年前、NHKの紅白歌合戦で大トリを務めたSMAPのメンバーは、こう語った後で「世界に一つだけの花」を歌った。 「みんなが…

10/2

1976年6月26日、日本中がテレビにくぎづけになった。アントニオ猪木さんとモハメド・アリさんの一戦だ。瞬間視聴率50%を超えたこの試合は、猪木さんがマットに寝転ぶ場面ばかり目立って終了。プロレス誌に「ファンの不満だけが残る」と酷評された。 映像を見…

10/1

季節はちょうど今ごろだろう。志賀直哉の「小僧の神様」は、神田の秤屋の番頭がすし談義をかわす場面から始まる。「そろそろお前の好きな鮪の脂身が食べられる頃だネ」「あの家の食っちゃア、この辺のは食えないからネ」。そう、トロは秋の味覚だったらしい…

9/30

映画「十戒」は旧約聖書「出エジプト記」を原典にした大作である。圧政に苦しむイスラエルの民が天啓を受けたモーセに率いられ、エジプトを脱出する。人びとは家財道具を荷車に積み出発した。映画では、「世界に自由が生まれた日である」との語りが挿入され…

9/29

ことしのプロ野球シーズンが最終盤を迎えている。リーグ優勝や個人の記録を伝えるスポーツ面の隅で、選手の引退が報じられている。爽やかな笑顔でバットを置くスターがいれば、記者会見もなくそっとグラウンドを去る後ろ姿もある。それぞれの引退模様だ。 か…

9/28

日本武道館を抱える北の丸公園の一角に、吉田茂元首相の銅像がある。日本初の国葬後に建てられ、木立の間で静かにただずんできた。それがここ数日、急に身辺が物々しくなった。警官が絶えず見回り、ヘリが舞う。近くのお堀には警視庁のダイバーが潜っていっ…

9/27

公園や川の土手を曼珠沙華が彩ったお彼岸も、昨日で明けた。本来ならナシにカキなど実りを供え、故人を静かにしのぶはずが、今年はどうも気持ちの収まりがつかなかった感じだ。安倍晋三元首相の国葬をめぐって賛否が激しく対立しているゆえだろうか。 人々の…

9/26

高速増殖炉の真上をホバリングするヘリコプター。犯人の要求は国内の全原発を使用不能にすること。拒めばヘリは墜落し原子炉を直撃するという。2015年に映画になった東野圭吾さんの「天空の蜂」は原発の「安全神話」の虚をついたサスペンス小説だ。 刊行され…

9/25

自分に届いた郵便物を手に新入社員が先輩に尋ねる。「これ何でしょう」「召集令状じゃないか」「召集令状って、いったい何です?」。小松左京さんのSF小説「召集令状」はそんな会話から始まる。舞台は終戦から18年後。戦争を知らない若者が街に増え始めた頃…

9/24

東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けた宮城県の南三陸町。10月1日開館の震災伝承館「南三陸311メモリアル」を、おととい一足はやく見学した。「命を守る難しさを伝える。目的はこれに尽きる」。佐藤仁町長らの強い思いで完成にこぎつけた施設だ。 町民た…

9/23

歌舞伎などの芝居で背景の山や川、橋などを描いた大道具を「書き割り」と呼ぶ。貧乏暮らしで家財道具を売り払った男が、近所の画家に豪華な家具を描いてもらい家の壁に貼る。武道の腕があるように見せるため、ついでにヤリも。古典落語「だくだく」である。 …